About Us

 

《代表挨拶》

    私は生まれつき耳がきこえません。自分一人の時は、その不便さを自分の努力で乗り越えたり、時には諦めたりしながら過ごしてきました。

 そんな私ですが、出産を機に「きこえない」ことをこれまで以上に意識し始めました。きこえないことを理由に、子どもに関することを諦める訳にはいかない。一方で、一人の限界を感じ始めました。同じライフステージの方と知り合いになりたい、つながりたいと思っても、思うようにいきません。子ども同士で遊ぶ機会ももたせてやれず、申し訳ない気持ちでした。

 東日本大震災の際、地域とのつながりの大切さを思い知ったこともきっかけとなり、きこえないママがきこえる人とつながっていける場、そして「ここなら安心して出かけられる」と思える場を作ろうと思い始めました。

 その後、縁あって2013年に「こまちぷらす」と出会い、スタッフの皆さんに背中を押して頂きながら、2014年9月に「きこえないママ✖まちプロジェクト」を発足しました。プロジェクトでは、地域に住むママたちが集まり、きこえないママの本音や、きこえない人との話し方のコツなどを伝えていきながら、ママ同士色々な話をしました。きこえる、きこえないに関係なく会話が出来ることは、お互いにとってとても新鮮でした。

 一方で「きこえないことについて、知らないからこそ距離感が生じていたのかもしれない」「もっと幅広く私たちのことを伝えなくては」という思いが強くなりました。そこで今回、きこえない母親の視点で感じていることや、コミュニケーションのコツをまとめた冊子を発行することとなりました。

 まだお会いできていない皆さんにも、この思いが伝わることを、そして、これを機にまた、新たなつながりが生まれることを願っています。


《今後の展開》

 戸塚ではきこえないママの存在は少しずつ浸透して、きこえる人たちとの関わりは増えてきました。いざとなった時、頼りあえる存在が増えることは非常に心強いです。

戸塚での月1回の開催をきこえないママは心待ちにしています。戸塚区内だけでなく近隣の区から足を運んでくれています。参加することで、次回までの1ヶ月分のエネルギーチャージになると言われた時は嬉しかったですが、やや複雑でもありました。

それだけ安心して語れる場、行ける場がないからです。行きたいと思える場ってたくさんある必要はないのかもしれないけど、ふらっと立ち寄れる感覚って、確かに私にもありませんでした。

私のゆくゆくの夢はきこえないママたちが自分の住む区内でも安心して行ける場所が増えることです。それはおしゃべりの場でもいいし、何か教わることができる場でもいいのです。拠り所はいくつかあった方が気が楽だと思います。

1人の声では届けられないものでも何人かの声が集まることで届けられるものもあるのではないでしょうか。話してスッキリするだけでなく、その声をどこかに反映させることができたら、これから子育てをする人にもまだまだ子育てが続く人にも道ができると信じています。

子育てだけに特化したことではなく、1人の女性として、自分が社会とどんな関わり方をしたいか、どんな生き方をしたいかを自分自身に問い、向き合うきっかけにもなる場でありたいんです。

そのためにも話の内容がつかめ、対話ができる環境を整えて増やしていきたいものです。


きこえないまま✖まちプロジェクト主宰:松本茉莉

こまちぷらす・・・横浜市戸塚区を拠点に活動するNPO法人。「子育てをまちでプラスに」を合言葉に、社会的課題解決型事業を提案する。


《スタッフ紹介》

杉本 蘭

  広報を担当しています、杉本です。

 私自身は健聴で、きこえない方と関わる機会も、これまであまり多くありませんでした。

2017年の春、プロジェクトの一環で開催されていた手話の教室に、なんとなく興味を持って参加したのがきっかけで、

「きこえないママ×まちプロジェクト」に関わらせて頂くことになりました。

 プロジェクトに参加する前は、「手話ができないと何も伝えられないんじゃないか」「手話ができる人ばかりで、迷惑をかけるのでは」という不安もありました。でも、いざ参加してみると、ゆっくり話すことで口を読んでもらえたり、要所要所で筆談を活用したり、ちょっとした工夫でいくらでも伝える手段はあると実感。手話の技術よりも、こうした工夫について考えもしないで「手話ができないから、きこえない人とは話せない」と思い込むことの方が、よほど自分の世界を狭めていたと気づかされました。

 何より先輩ママたちの十人十色の子育てエピソードは興味深く、毎回プロジェクトに足を運ぶのが楽しみになりました。地方から出てきて就職し仕事以外の人脈がなかった私にとっては、地域で知り合いが増えていくのも嬉しいことでした。 

健聴の人にとって「子育ての先輩・仲間」を見つけられる場所は、他にもたくさんあるかもしれません。私の場合も偶然が重なり、たまたま出会ったのが〝他の場所より、きこえない方が多い場所〟だったというだけです。

 しかし、代表挨拶にもあるとおり、「きこえないことがハードルになり、このような場所になかなか出会えない」という悩みをプロジェクトでは頻繁に耳にします。私自身、手話ができないと話せないと思い込んでいたことがあったので、自分も「見えない壁」を築いてしまっていたかもしれない、と反省しました。

 プロジェクトをとおして、きこえないママが気軽に来られる場所を作ることはもちろん、私たちの活動や、きこえないママの思いを発信することで、そうした壁を少しでもなくしていけたらと思います。